著者のまごこもです
この小説を書きながら、
障害者施設の職員として働いていました。
日々、人と接しながら、
どこに本当の困難があるのかを考えることが多かった
あるとき、利用者の方がこう言いました。
「手すりがあればいいのに。
私ね、障害に困ってるんじゃないの。
町に困ってるだけなのよ。」
その言葉が、頭から離れませんでした。
僕が見ていた世界が、変わった瞬間でした。
未来とは、そういう「小さな声」に
誰かが耳を傾けた結果かもしれない。
そう思って
小説の中に“手すりがある未来”を描きました。
でも、その未来があるなら、
そこに至るまでに
誰かが諦めずに声を上げ続けた過去が
あるはずだ──
そう思ったんです。
だからこの物語には
未来・現在・過去の主人公
が登場します。
彼らの選んだ道は違うけれど、
どこかでつながっていて、
あきらめない気持ちが
時代を超えて受け継がれていく。
でも本当は
この物語の中でいちばん届けたかったのは、
その人をそばで支えてきた人
たちのことです。
母親だったり、友人だったり、
ちょっとした言葉をかけてくれた誰かだったり
その「見えないやさしさ」が
人生をつないでいる。
社会に少し疲れてしまった人
誰かの他人顔に気づいたことのある人へ
大人が目をそむける世界でも
できることはある。
そう信じたくて
自分はこの物語を書きました。
