ミステリー小説『方舟』の犯人について考えた

夕木春央『方舟』の書影と、“今夜読みたいおすすめ小説特集”の文字が入ったアイキャッチ画像

今回手に取ったのは、各所のミステリーランキングを席巻した話題作、夕木 春央さんの『方舟』。正直に言いうと、完全にやられました。

帯に書かれた「衝撃の結末」という言葉。よくある煽り文句だと思って読み始めたんですが、しばらく天井を見上げて動けなくなるほどの衝撃。

今回はそんなサスペンスの傑作をご紹介します。

夕木春央『方舟』作品概要

手に持った文庫本『方舟』。大きな岩を背景にしたカバーが印象的
項目内容
タイトル方舟
著者夕木春央
出版社 / レーベル講談社
発売年2024年08月09日
ジャンルミステリー / サスペンス

あらすじ|極限状態で人は何を選ぶ

舞台は、山奥にある地下建築「方舟」。

主人公の柊一(しゅういち)を含む大学時代の友人たちと、偶然居合わせた家族の計9人は、地震によって地下施設に閉じ込められてしまいます。

さらに…水没のタイムリミットまで迫ってくる極限状態。脱出する方法はただ一つ。「誰か一人を犠牲にして、岩を動かすこと」。

そんな中、閉鎖空間で殺人事件が発生します。犯人が誰なのかわからなければ、全員が水に沈むか、無実の誰かが犠牲になるか――。

犯人を見つけ出し、その犯人を「生贄」として捧げるしか助かる道はない、極限の心理戦と推理が始まります。

方舟(夕木春央)作品レビュー

楽しめる
低い
高い
切ない
低い
高い
読み応え
低い
高い

本作は、古典的なクローズドサークルの形式を踏襲している。閉鎖空間・限られた時間の要素が配置され、物語全体の緊張感を支えている。

伏線の配置は整理されており、終盤に向けて収束していく構造。主人公と従兄の関係性が、読者の視点誘導の役割を担っている点も特徴的。

構造の巧みさとテーマ性で注目を集めたクローズドサークル作品としての読み応えを備えつつ、読後に議論の余地を残すタイプのミステリー

方舟(夕木春央)犯人について

ここからは、私の個人的な感想を。 いやあ……すごすぎました。サスペンス好きとして、ある程度の展開は予想しながら読んでいたんです。

「主人公の柊一、実は多重人格説あるんじゃないか?」 「死体だと思っているものは、実は違う人の死体なんじゃないか?」などなど…

そんな風に、いろいろなトリックを妄想しながら読み進めていました。 でも、最初から最後まで、私の予想はすべて外れました。

私が想像していた「衝撃」なんて可愛いもので、実際のラストはそれを遥かに超えるレベルアップした衝撃が待っていました。

あの最後の1行、忘れられません。

極限状態で見えた「人間」の答え

この物語は単なる犯人当てではありません。 ここまで閉鎖された環境で、生きるか死ぬかの選択を迫られたとき、果たして「諦める」のは誰か。

誰かを犠牲にしなければ自分が助からない。そんな状況で見せつけられたのは、「人間という生き物の答え」そのものだった気がします。

圧倒的な頭脳戦

特に印象に残ったのは、力では男性に勝てない女性が、どう戦うかという点。 腕力ではなく、言葉と論理、そして心理を操る「頭脳戦」が凄まじい。

正直、この結末を初見で当てられる人がいたら、その人はかなりのサスペンスマニアか、探偵の才能があると思います。それほど…恐ろしい。

読後に残る、冷たい戦慄と興奮。 「騙されたい」と思っている方には、自信を持っておすすめできる一冊です。私はこの頭脳戦に負けました。

おわりに

読み終わって本を閉じた後も、ふと「もし自分が、あの方舟にいたら……」と考えずにはいられません。犯人のしたことは許されませんが…

でも、あの極限状態、迫りくる死の恐怖の中で、自分が生き残るために必死になったその行動を、一方的に責められないな、と思った。

極限状態で人は何を選ぶのか。その答えを見た気がしました。それと同時に 「他の解決策はなかったのか?」 とも、今も考え続けています。

もしかしたら、別の道があったのかもしれないし、あれしか道はなかったのかもしれない。 そんな正解のない問いを突きつけられた気分。

この「方舟」という物語、読んだ人それぞれできっと受け取り方が違うはず。 もし読んだ方がいたら、こっそり感想を語り合いたいですね。

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